あらすじ
この女から、逃れられない。衝撃が二度襲う破滅のサスペンス!
40歳独身の尚之は、お見合いパーティで《サトウミサキ》と出会う。彼女の虜となり逢瀬を重ねる尚之だが、結婚の話が進むにつれてミサキは不審な行動を見せ始める。一方、若手刑事の宮下は、一匹狼のベテラン・安井の相棒として、焼死事件を追っていた。単純な火災事故のはずが、安井だけは裏に潜む事件を確信しており――。関わる者を必ず破滅させる女、その正体とは? 全ての謎が繋がるとき、あなたを再び衝撃が襲う!
登場人物とそれぞれの関係性
この話はサトウミサキという謎の女性が関わる者を破滅させていく話。
・梅田尚之とサトウミサキ→お見合いパーティーで出会った2人。梅田は実家が金持ちで教員をしている。次第に深い中になっていき、結婚を考えるまでいくがミサキには謎が多い。
・小田切琢磨とサトウミサキ→ファミレスで働いている小田切。ある日、客として来店したミサキの方から小田切を誘う。
・小谷沙保里とサトウミサキ→小谷は小田切の同級生。ある事実を示唆する手紙が届き、同窓会に出席するとそこには手紙の送り主のミサキがいる。
・青木繁子とサトウミサキ→繁子の家にミサキが通い、認知症の繁子の世話をミサキがしている。孫の元嫁も繁子の家に通う。
・安井隆三→サトウミサキの事件を追っている刑事。
サトウミサキの真の目的
それぞれの人物と違うキャラクターを演じて接触していたサトウミサキには真の目的があった。どの章も最後でそれぞれの人物に写真やレポートを突き付けて愕然とさせている描写で終わる。
それは、15年前の事件に関するレポートであった。当時、佐藤浩紀という中学生がいじめられていた当時の沙保里を助けたことがあった。沙保里から好意を寄せられた浩紀は、その気持ちを受け入れなかったことでいじめられる側に回ることになる。段々いじめはエスカレートし、失禁させられたり汚物を食べさせられたり、テーブルに縛り付けて性的暴力を受けたり…。その結果、浩紀は自殺を図り、現在は通常の生活ができなくなっている。
ミサキは浩紀の実姉であり、母が亡くなったことがきっかけで復讐を始めていた。各章で出てくる人物は、沙保里はもちろんのこと、浩紀の担任や教頭、いじめに加担していた人であった。
感想
サトウミサキとはだれなのか、どんな目的でいくつもの顔を使い分けているのか。その謎は読み進めていくと1番初めに浮かび上がってくる。しかしそれだけに留まらず、青木繁子という人物のカラクリまで最後に明かされることになると、やられた~と思うほかない。
本に関しての率直な感想は、いじめのきっかけが助けてもらった側の勝手な妄想で好きになって、フラれたからその子をいじめるとかそんなことありえるの?と思ってしまった。何でもあり得る世の中だけど、沙保里はいじめられている側だったのにいじめが収まるだけでなくいじめる相手を選ぶ決定権を持っていることにも驚いた。
サトウミサキの手のひらで全員が踊らされているのが、特に初めの尚之の章では「みんな目、覚まして」と思ってしまっていたけれどミサキの本当の気持ちに近づくにつれ今度は嵌められている側のほうが悪者に思えてくる仕掛けになているので素晴らしい。
“サトウミサキ”という名前の漢字を頑なに明かさないようにしていたのはなぜだったのか。疑問が残る。佐藤というありきたりな苗字なのでそこは言ってもよかったのではないかと思う反面、佐藤浩紀に思いがすぐにいくことを避けたかったからなのかと深読みする自分もいる。